郷里の四季  冬    春    夏    秋  

 日本でも有数の豪雪地帯である会津地方。一晩に一メートル以上降ることも珍しくなく、朝起きてみたら家がすっぽり埋まっていたこともありました。大人たちに藁を編んで作った「雪踏み」という長靴で道をつけてもらい、二キロ離れた学校へ通います。除雪もしていない頃でしたから、吹雪の日は、背丈程もある吹きだまりを上級生を先頭に乗り越えながら手をポケットに突込み、顔をギュッとしかめ、風を避け下を向いたままひたすら目的地を目指すのです。悪天候のせいで、授業の途中で帰ることもありました。帰れば雪降ろしが待っています。屋根に積った重い湿った雪を放置すると家が潰されてしまいます。作業中に急勾配の屋根から滑り落ちる事故も起きました。

 そんな厳しい冬の楽しみといえば「さい(塞)の神」です。旧暦の正月十五日(二月中旬頃)に各家庭の正月飾りを持ち寄って燃やし、厄払いをして火種を家に持ち帰ると幸福が来るという言い伝えがあります。家では餅を摺き、小汁こづゆや煮物をつくって遅い新年を祝います。当時は、新暦の正月より、こちらの方が盛大でした。

 時間が前後しますが、冬の初めにはつらい別れも経験しました。子供たちは小遣いを稼ぐためウサギを飼います。春先に子ウサギをわけてもらい夏から秋にかけてエサを与えて大きく育て、真っ白に毛替りした冬に売るのです。専門の業者がやってきてその場で買い集めたウサギの皮を次々といでいく作業を見るのは可愛そうで涙が出ました。握りしめた百円玉の代償が今、命を落としていく姿は無残であり後ろめたさを痛切に感じさせるもので、本当に辛いものでした。

 正月には、町々に市がたちます。若松市は十日市、坂下町は十四日市、高田町は二十日市というふうに巡回して行きます。出店が立ち並び、普段は見ることのできない玩具、小動物、射的のようなゲーム、変わった音の出る楽器、何でも切れてしまう刃物などが売られ、香具師独特の面白い口上に吸い寄せられるように客が集まってきます。現金なもので、ポケットに入れてあるお金はあの可哀想なウサギの代償なのですが、そんなことは忘れてつい手を出してしまい、あとで母親にしかられることになるどうしようもないものを買い込んでしまうのです。親孝行にと思って買った肩たたき器は、一度使ったきりで柄が壊れてしまいましたし、ハムスターもいつのまにか逃げられてしまいました。大人にだまされた後悔とみじめな気持ちを痛烈に味わったのでした。